東京地方裁判所 昭和35年(行モ)20号 決定 1960年7月22日
申立人 中央労働委員会
被申立人 石井寿一
主文
被申立人は、被申立人を原告とし申立人を被告とする当庁昭和三五年(行)第二五号不当労働行為救済命令取消事件の判決が確定するまで、申立人が昭和三五年三月二日付で中労委昭和三三年(不再)第三二号事件について被申立人にした命令のうち、荒井宏、小倉寿三両名を原職に復帰させ、且右両名に対し昭和三五年八月一五日までに各金一〇万円並びに同月一六日以降原職復帰に至るまで一ケ月各金一万円の割合による金員を支払う限度において、右命令に従わなければならない。
(裁判官 桑原正憲 駒田駿太郎 北川弘治)
【参考資料】
緊急命令申立書
申立の趣旨
右当事者間の御庁昭和三十五年(行)第二十五号行政処分取消請求事件の判決が確定するまで、被申立人は、荒井宏、小倉寿三両名に対する昭和三十二年七月十五日付解雇を取消し、両名を原職に復帰せしめ、かつ解雇の日から原職復帰に至る間、同人らが受けるはずであつた給与相当額(予告手当としてすでにそれぞれ支払われた額を控除した額)を両名に支払わなければならない。
との決定を求める。
申立の理由
一、荒井宏(以下単に姓のみを表示)、小倉寿三(以下単に姓のみを表示)の両名は、もと被申立人に雇用される従業員であつて、昭和三十二年七月十五日付、被申立人から新聞購読代金横領費消等を理由に解雇されたものである。
二、これに対し、荒井、小倉両名の所属する県南一般合同労働組合(以下単に組合という)は、労働組合法第七条第一号違反の不当労働行為であると主張して昭和三十二年七月二十五日埼玉県地方労働委員会に救済の申立をなしたところ、同委員会は、これを埼労委昭和三十二年(不)第九号として審査し、昭和三十三年十一月二十日付で被申立人に対し「被申立人は申立人組合の組合員荒井宏、同小倉寿三の両名に対する昭和三十二年七月十五日付の解雇を取消して原職に復帰せしめ、原職復帰に至るまでの間の右両名の受くべかりし給与相当額(予告手当として既にそれぞれ支払れたる額を控除したる額)を支払わなければならない。」との命令を発し、この命令は同月二十七日被申立人に交付された。
三、そこで、被申立人は、右命令を不服として昭和三十三年十二月十一日申立人中央労働委員会に再審査の申立をなしたが、申立人委員会は、これを中労委昭和三十三年(不再)第三十二号事件として審査した結果、昭和三十五年三月二日付で「本件再審査申立を棄却する。」との命令を発し、同月十日、これを被申立人に交付した。
四、右の再審査命令に対し被申立人は、昭和三十五年四月八日、申立人委員会を被告として東京地方裁判所にその取消を求める訴を提起し、事件は御庁昭和三十五年(行)第二十五号事件として目下、審理中である。
五、この間において、被申立人は右の救済命令を現在に至るまで履行していないのであつて、もしこの訴訟が確定するまで、かかる事態が継続し、申立人委員会の発した前記命令の内容が実現されないならば、右の救済を受けた労働者およびその家族の生活は甚だしく窮乏し、恢復すべからざる損害を蒙むることは明らかであり、ひいては労働組合法の立法精神は没却されるに至ることになるので、昭和三十五年六月一日の申立人委員会第三百七十二回公益委員会議において労働組合法第二十七条第七項の規定にもとづく命令の申立を行うことを決議し、ここに本申立に及んだ次第である。